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第1部 一章【財前姉妹】その15 第九話 カオリたちの青春

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-09-03 10:00:00

211.

第九話 カオリたちの青春

「「かんぱーい!!」」

 カオリたち麻雀部はミサトの決勝戦進出を『グリーン』で祝っていた。今日は特別にいつもは頼まないコーヒーフロートだ。

「やー、やっぱりフロートはソフトクリームよりバニラアイスに限るわ。このアイスと氷が接触してる部分にシャーベットが出来上がって、それがコーヒーとすごく合うのよ。わかる?」

「あー分かる! そこ美味しいよね!」

 タイトルホルダーだろうがプロ雀士だろうが女の子はアイスが好きなのだ。

ワイワイ

ワイワイ

 あーだこーだ騒がしいカオリたちだが今日はもうお客さんがカオリたちしか居なかったので容赦なく騒いだ。こんな時間がカオリたちの青春だった。楽しい。心から好きだと思える仲間たちと今のこと、未来のこと、思い出話。好きなことを好きなだけ話す時間。

 こんな風にwomanともずっと話していられるものだと思っていたのに。

(大人になんてなりたくないな……)

《なにを言ってるんですか。そんなの無理ですよ。生きている以上必ず大人にはなります》

(そうだね。分かってるよ)

《カオリ、幸せな大人になりなさい》

「カオリー。私、明日早いからもう帰るよー」

「あっ、待ってよマナミ~。一緒に帰ろうよー」

「あんた達姉妹は本当仲良しね。よし、私もそろそろ帰ろう」そう言ってミサトも精算を済ませた。

「みんなもあまり遅くならないようにね。じゃお先に」

「バイバーイ」「さよーならぁ」

────

──

 駅までの帰り道、カオリたちはさっきの話の続きをしていた。

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